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中小企業診断士の勉強会の講師を務めました。

 私は,中小企業診断士の勉強会に参加しています。今までは,参加者の一人として発言するだけでしたが,今回はこの勉強会では初めての講師になります。  テーマは,「平成26年会社法改正について」です。  本改正は,会社法制定以来の大きな改正で,理論的にも実務的にも重要なものといわれています。  平成27年5月1日の施行を間近に控えての講演だったので,参加者はいつもよりちょっと多めだったのがうれしく思いました。  本改正では,監査役等委員会設置会社の創設,社外取締役を置くことが相当でない会社の説明義務、社外取締役等の要件の厳格化,多重代表訴訟の導入,組織再編の差止請求の拡充,詐害的会社分割が実現した点は特筆すべき点です。  これらの点につき,順次説明していきましたが,中小企業診断士向けの講演ということもあって,最後の「詐害的会社分割」に若干多く時間をとり,私の実務経験を踏まえた上の体験談を述べさせていただき,その後,参加者全員で意見交換を行いました。  いつもはその後の懇親会にも参加するのですが,本日は,体調があまりよろしくないため参加できず残念でした。  仕事が忙しいとなかなかまとまって勉強する時間がとれませんが,講師を務めるとなると手は抜けませんので,本テーマについて、数冊本を読んだ後,法制審議会のメンバーの経歴等雑談に必要な情報をネットで確認してから,挑みました。  今後も機会があれば,やらせていただいたいと思っています。

三鷹ストーカー事件控訴審破棄判決の解説

 三鷹ストーカー事件の一審判決が破棄されたとの報道に接し,とても驚いています。  懲役22年の判決が破棄され,1審に差し戻され,もう一度裁判員裁判をやり直すことになります。  ご遺族のお気持ちを察すると,いたたまれない気持ちになりますが,法律論としてはやむを得ないところです。  新聞記事のみで判決書を見たわけではないので,若干推論も混じりますが,わかりやすいのは 産経新聞の記事 でしょうか。この記事には,「大島隆明裁判長は「名誉毀損罪を実質的に処罰する判決で、1審の審理の進め方には違反がある」と指摘。」と書いてあります。  司法研修所といって,司法試験に受かった後に通う学校で勉強するときに使うテキストに「刑事判決書起案の手引き」という本があります。この本には,「判決書に「罪となるべき事実」を記載するにあたっては,他の犯罪をも認定したのではないかと疑われるおそれのある表現はできる限りさけなければならない」と記載されています。  一例をあげると,強盗において、住居侵入が起訴されていないのに,事実として住居に入って強盗をしたからといって,「○○方に押し入り」などと書いていけないと厳に戒められたのを思い出しました。  今回は,「池永被告が交際中に撮影した生徒のプライベートな画像を事件前後に流出させた「リベンジポルノ」に着目して,これを判決書に記載して,「名誉毀損罪を実質的に処罰する」ことは許されないとしたのです。ただし,この判決もリベンジポルノを「量刑を考慮する要素に取り入れること自体は否定」していないのですが,つまり,判決書に名誉棄損的な事実を記載したというような単なる判決の表現を問題にしたのではなく,「裁判開始前に裁判官と検察・弁護側の三者で行われる公判前整理手続きについて「(リベンジポルノについて)主張・立証を行うことの当否、範囲や程度が議論された形跡は見当たらない」こと,つまり,審理の内実が伴っていなかったのではないか,という点に着目して,裁判をやり直させることにしたのです。  控訴審の弁護人は,「同種事案に比べて、1審判決は重すぎる」と主張、検察側は控訴棄却を求めていた。」とあるので,おそらく弁護人が気付かなかった,主張していない論点を裁判所が職権で判断したのではないかと思われます。  以上は,司法試験合格後に直ぐ習うことなので,極...

新年のご挨拶ー平成27年ー

明けましておめでとうございます。 昨年中は大変お世話になりました。 昨年末は税理士との忘年会や、社労士との忘年会や、中小企業診断士との忘年会等で忙しかったため、新年は久しぶりに家族と自宅で過ごし、初詣に行きました。 ちなみに、上の文章の「等」には、通常使われているより強い意味が込められておりまして、決して忘年会ばっかりで忙しかったわけではないという意味です。日常生活では、一つの言葉をめぐってその意味を確定しなければならない場面はそんなには多くないかと思いますが、裁判実務ではよく使われてる技術なのです。例えば、裁判である書証を提出して、その書証によって立証したいことを「○○が○○したこと」と書いてある場合と、「○○が○○したことなど」と書いてある場合とで、争点によっては、大きく意味が異なる場合があります。そこで、この「など」とは何か、と釈明を求めたり、その内容次第では撤回を求めたりすることがあります。 上の例は、自分の法律家としての知識・常識と社会的な常識のズレを表す一例です。古来から「牛羊の目をもって他人を評量するなかれ」と申しますが、狭い自分の知識や基準で他人を評価すると、自分でも気付かないうちに過ちをおかすことのないとはいえません。初心忘れるべからずの気持ちで本年度も仕事に励みたいと思います。 今年も宜しくお願いしたします。 平成二十七年 元旦

社労士の研修旅行の講師をやりました。

 私は、社労士の勉強会に参加しています。その勉強会では年に1回有志で研修旅行をしています。  今年は、長野県の松本へ。一日目は早めに宿に行き、研修を終え、その後懇親会、翌日は観光を少しして帰るというような日程です。  その一日目の研修での講師を引き受けることになりました。テーマは、「弁護士から見た他仕業」です。  弁護士がやっていることって、一般の方はもちろんですけど、他仕業の人からも十分に理解されているとはいえない状況にあります。逆に、弁護士も他仕業のことを十分に理解しているとはいえないでしょう。  そこで、弁護士があまり他の人には言えない仕事の実態とか、自分は、社労士や税理士、司法書士、行政書士、会計士の仕事をこんな風に見ているんです。というな話をし、その後、クロストークで各自が意見交換というようなやり方をしました。  最後には、会長から「どこに行っても聞けないような貴重なお話をいただいて大変勉強になったと思います。」と言っていただけました。  翌日は、松本城を見学し、お蕎麦を食べて帰りました。ざざ虫の類は私は食べませんでした。  士業は信頼関係がとても大事ですが、日頃の交流が信頼関係の基礎になることが多いので、こういう旅行会はとても大事な企画なのです。これからも参加したいと思いました。

社労士の勉強会に参加してきました。|外国人技能実習制度について

 今回のテーマは、「外国人技能実習制度について」です。  技能実習制度の目的は、日本国の技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することにあるとされおり、平成5年に創設された制度です。在留資格は、いわゆる入管法別表第1の2の表の「技能実習」となります。制度の概要については 厚労省のサイト をご覧ください。  米国務省の「売春や強制労働などを目的とする世界各国の人身売買に関する2014年版報告書」では、この制度が強制労働に悪用されている事例が後を絶たないと批判されています。この点に関する産経新聞の記事は こちら をご覧ください。   技能実習生3人が実習先とこれをあっせんした協同組合に対し金沢地裁に訴訟を提訴したとの記事 もあるように、残業代を支払わないという労働基準法違反、最低賃金法違反を始め、パワハラ、セクハラといった現象面の問題もありますが、一番の構造的な問題は、雇用主がパスポートを預かったり、一定額の保証金を預けるデポジット制や被用者が孤立していることによって生じる、雇用者が費用者に対して取得する事実上の強制力です。  この問題については、東京で弁護士業をやっているとあまり実感する機会は多くありません。上記の記事でも金沢地裁に提訴とあるように地域差があるのです。今でも実習生が失踪してしまう例がそれなりにあるのですが、一例は、上記のように、雇用主のほうに問題があり、実習生が逃げてきたというものですが、いわゆる泣き寝入りによって表面化しない事例も多数あると推測されます。ただ、検察庁は、10年以上前になりますが、入管法違反(不法残留)、いわゆるオーバースティを起訴しない方針としました。そのため、技能実習生が失踪し、多くは東海地方で、違法に稼働しているようなのですが、多くの弁護士にとって、どうして失踪するに至ったのかその原因を公判を通じて把握することができない仕組みとなってしまったのです(もちろん独自のルートを通じて情報を収集して専門的に取り組みを続けている弁護士もたくさんいらっしゃいます。)。  外国人被用者をあっせんする協同組合や、多くの弁護士よりはこの問題に近い立場にある社労士の先生方の実感だと、10年前と比べて雇用主の意識はかなり変わってきているとのことでした。以前は安い労働力を使うため...

第4回中小企業専門家養成講座を受講しました。

第4回中小企業専門家養成講座を受講しました。本日の講演テーマは「中小企業・小規模事業者の支援体制」です。 講演してくださったのは、 中小企業庁前長官の鈴木正徳氏 と 同庁経営支援部長 の丸山進氏です。日本の中小企業政策は、時代の要請に応じて基本理念が見直されつつ、様々な支援策が整備・充実されてきた歴史がありますが、その政策を実施している中小企業庁のいわゆる「中の人」が講演してくださるというめったにない機会です。 日本の中小企業政策には非常にわかりにくい面あり、それが中小企業の専門家の育成を妨げてきたという事情があります。 その一つは、制度自体が非常に多くあり、複雑という面があります。認定支援機関は、経済産業大臣と内閣府特命担当大臣(金融担当)の認定を受けています。たまに弁護士でも誤解してHPに書いている人がいますが、中小企業庁や同庁長官から認定を受けているわけではありません。中小企業庁は、経済産業省の外局ですから、経済産業大臣というのは理解できますが、なぜ経産省と金融庁の連名形式で制度設計をしたのかというと、認定支援機関に信用金庫等の金融機関が入ることと、いわゆる金融円滑化法対応が制度の大きな柱だったからです。また、中小企業政策を決定するのは、国ですが、それを実施する主体は、国のみならず、都道府県、市町村も含まれます。そのため、制度が実施主体、目的に応じて区々わかれ、自分が利用したい制度をどこが管轄しているのかも決してわかりやすいとはいえません。 もう一つの事情は、中小企業政策は、変化が速いということです。ある補助金を何かの機会に勉強して、何かの機会に社長に話したら、もうその補助金は廃止されてしまっていたということも十分にあり得る話ですし、補助金の公募が始まってから準備をしても間に合わず、一次公募はもう終わっていまい、本年度予算は使いきってしまいましたというようなことも十分にあり得ます。本が出版されるサイクルは早くても2年程度ですから、本を読んで勉強するというわけにもいかず、今どのような制度があり、いつまで利用できるかも決してわかりやすいとはいえません。 そのような事情は、実は、時々の政府の政策、つまり、閣議決定の時期と、国会での法律、予算の成立時期とリンクしているから生じることなのです。どのような時期に、どのような方法で情報を収集し、どのような...

第3回中小企業専門家育成講座に参加しました。

第一東京弁護士会主催の第3回中小企業専門家育成講座に参加しました。 テーマは「地方自治体の中小企業支援政策」です。 我が国の中小企業政策は,中小企業基本法等の国の法律に基づいておりますが,実施主体は,国のみならず,各都道府県,各市町村の地方自治体も含まれています。中小企業は,地域色が強いので,むしろ地方自治体の施策のほうが重要ともいえるかもしれません。予算の規模は,国,都には遠く及びませんが,地方の実情に応じた現場の実務を担当しているのが,東京では区の中小企業政策です。今回は,荒川区と板橋区の政策の実務を勉強しました。 一昔前は,民間の一企業に税金を使って支援をすることに批判的な声もあったようですが,現在では,中小企業が国の経済の基礎を担い,雇用の創出主体でもあるなどその積極面に着目した積極的な支援が求められており,これまで区の行ってきた事業を公社に委託するなどの流れが強くなっているようです。 荒川区では平成18年からMACCプロジェクトを実施しており,そのポイントは次の三点にあるとされています。 行政のコーディネート力の向上 産学官ネットワーク強化と連携の場の創設 先導的な産学連携プロジェクトの形成 首都大学東京健康福祉学部との連携で,手を放しても倒れない自立する杖, フェレット杖 の開発に成功したとの実績があります。 板橋区では,起業家精神が高揚する場所の提供というコンセプトに基づき,事業所,従業員数,付加価値の更なる増大を目指し,公益財団法人板橋産業振興公社の事業を活用しています。 これから中小企業が生き残っていくためには,産学官のネットワークだけでなく,中小企業同士の産産ネットワークが必須の時代となっており,それに応じてトラブル・紛争も多くなっております。中小企業の主な相談相手は今までは顧問税理士だけというところが多かったと思います。今後は,税理士と弁護士のネットワーク,弁護士同士のネットワークを通じて,専門性の高いサービスと,総合的なサービスの両立という難しい課題が突きつけられてるといえそうです。 私が会長を務める 「新時代のプロフッションを目指す会」 は,正にこのような難しい課題に対応するために設立された会です。時代は大きく動いています。