社労士の勉強会に参加してきました。|外国人技能実習制度について

 今回のテーマは、「外国人技能実習制度について」です。

 技能実習制度の目的は、日本国の技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することにあるとされおり、平成5年に創設された制度です。在留資格は、いわゆる入管法別表第1の2の表の「技能実習」となります。制度の概要については厚労省のサイトをご覧ください。

 米国務省の「売春や強制労働などを目的とする世界各国の人身売買に関する2014年版報告書」では、この制度が強制労働に悪用されている事例が後を絶たないと批判されています。この点に関する産経新聞の記事はこちらをご覧ください。

 技能実習生3人が実習先とこれをあっせんした協同組合に対し金沢地裁に訴訟を提訴したとの記事もあるように、残業代を支払わないという労働基準法違反、最低賃金法違反を始め、パワハラ、セクハラといった現象面の問題もありますが、一番の構造的な問題は、雇用主がパスポートを預かったり、一定額の保証金を預けるデポジット制や被用者が孤立していることによって生じる、雇用者が費用者に対して取得する事実上の強制力です。

 この問題については、東京で弁護士業をやっているとあまり実感する機会は多くありません。上記の記事でも金沢地裁に提訴とあるように地域差があるのです。今でも実習生が失踪してしまう例がそれなりにあるのですが、一例は、上記のように、雇用主のほうに問題があり、実習生が逃げてきたというものですが、いわゆる泣き寝入りによって表面化しない事例も多数あると推測されます。ただ、検察庁は、10年以上前になりますが、入管法違反(不法残留)、いわゆるオーバースティを起訴しない方針としました。そのため、技能実習生が失踪し、多くは東海地方で、違法に稼働しているようなのですが、多くの弁護士にとって、どうして失踪するに至ったのかその原因を公判を通じて把握することができない仕組みとなってしまったのです(もちろん独自のルートを通じて情報を収集して専門的に取り組みを続けている弁護士もたくさんいらっしゃいます。)。

 外国人被用者をあっせんする協同組合や、多くの弁護士よりはこの問題に近い立場にある社労士の先生方の実感だと、10年前と比べて雇用主の意識はかなり変わってきているとのことでした。以前は安い労働力を使うための制度と誤解している人が非常に多かったそうですが、現在は、社会保険に加入することが必須で最低限必要なコストを加えると、金銭面では、高卒程度の人を雇い入れるコストと同額は必要で決して安いとはいえないこと、コンプライアンスや様々な事実上の負担があることを含め、メリット、デメリットを比較して、導入を決めてください、と説明すると大概の雇用主の方々は理解してくださるとのことでした。

 雇用主と被用者は決して対等な立場でありません。共同組合が被用者と日本の社会と窓口となり、あるいは地域社会と被用者が直接接触できる場を設けることができれば、悪質な雇用者も強制力を用いることができなくなります。悪質な事例には、訴追を含め厳しい対応をとりつつも、一般の中小企業の経営者にとっては、信頼できる協同組合を探すことのできるネットワーク造りが急務で、中小企業の経営者の意識向上も含めた日本社会全体の底上げの必要性を改めて認識するいい機会になりました。今後も継続的に勉強会に参加し、情報発信を継続していく予定です。

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