投稿

2015の投稿を表示しています

年末年始の休業のお知らせ

 年末年始の休業のお知らせ  平成27年12月28日月曜日から平成28年1月1日金曜日まで休業させていただきます。  平常営業は平成28年1月4日月曜日からになります。  宜しくお願いいたします。  

中小企業診断士の勉強会(中小企業政策の歴史と意義)の講師をしました。

中小企業診断士の勉強会の講師を務めました。テーマは「中小企業政策の歴史と意義」です。  日本の中小企業政策の歴史は大きく三つに区分することができ,最も重要なのはいわゆる「新中小企業基本法の制定」です。  旧基本法は,高度成長自体に大企業と中小企業の同時発展をささせたものとして評価されていましたが,いわゆる産業政策的な色彩が強く,また,解釈によって運用を補っており,中小企業の政策のガイドラインとしては少し古すぎるものとなっていました。  そこに,独禁法の抜本的改正と相補うように,競争政策的理念の基に,新たな中小企業政策のガイドラインとして制定されたのが新基本法です。  産業政策と競争政策を比較検討した上で,中小企業政策の理念を法的観点から見ていくとどのような結論が導かれるかについて、2時間ほど講演した上で,30分間の質疑応答がありました。  その後は,本年度最後の勉強会ということで,忘年会にも参加しました。議論が白熱したため,若干遅刻してしまい、その分食事時間が短くなってしまいました。  単なる制度の説明ではなく,議論中心の会なので,非常に勉強になります。今後とも参加したいと思っています。  

瀬木比呂志著『ニッポンの裁判』を読んで

  明治大学法科大学院教授の瀬木比呂志氏の『ニッポンの裁判』が城山三郎賞を受賞したとの報道 に接し,読もう読もうと思いつつなかなか時間がとれないでいましたが,ようやく読了することができました。  以前 「瀬木比呂志著『絶望の裁判所』を読んで」という記事 を書きましたが,こちらは裁判制度批判の書で,本書は裁判内容批判の書で姉妹編にあたるとのこと。  『絶望の裁判所』はそのまま裁判制度批判の本で読みごたえはありましたが,ルポタージュ的な要素が強く,城山三郎賞というとちょっとイメージと違うなと思っていました。本書はルポ的な要素も十分がありますが,瀬木氏の人生観・人間性の現れた一種の文学作品に仕上がっていると思います。   論ずべき点は多々ありますがが、今回は私が前から思っていた点を一つだけあげることにします。  それは、裁判官はまず結論を決めてから,その理由を考えている。という点です。   本書には,社会は裁判官を人として見ていない,証拠を与えると自動的に答えがでてくる「正義の自動販売機」のように思っているのではないか,というちょっとショッキングな記載があります。  「瀬木比呂志著『絶望の裁判所』を読んで」という記事では,「裁判官は世間知らずだという広く流布している誤解である。」,つまり、裁判官の人間性に着目することの重要性に触れたのですが,この「正義の自動販売機」説的な誤解が広く流布していることは前から問題があるなと感じていました。  既存の概説書には,正義に適った永遠で客観的な法があり,裁判官は法に拘束され,法を解釈するのみであって立法をするのではないという世界観が書いてあることがあります。自然法・自然権的な啓蒙主義的法律観であって,また,法律の文言を重視するという意味で実証主義的法律観ともいえると思います。こういう法律観に基づくと上の「正義の自動販売機」説がでてきます。  今きちんと法律を勉強した人でこういう世界観をもっている人はどちらかというと少数派で,私も依頼者には,「そうじゃありませんよ。」と必ず説明することにしています。  瀬木氏は,「プラグマティズム」という哲学の影響を受けた「リアリズム法学」を自身の考えの基礎においているそうです。この辺になると法社会学とか法哲学をけっこうみっちりやってないとわからないと思いますので,

スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽

 歴代3社長が辞任し、上場企業としての「みそぎ」を済ませたはず東芝ですが、子会社で原子力発電所の建設や保守を手掛ける「ウエスチングハウス」社(WH)が、計1600億円の減損処理を行っていたことが 日経ビジネスの取材で分かったとの記事 です。   第三者委員会の調査報告書 もWHの減損問題については踏み込んでいないのですが、細野祐二氏の「東芝粉飾決算事件の真相と全容」(岩波、『世界』、873・227)ではその点が不十分であると指摘され、上記の記事とはちょっと異なる視点で問題提起をしていました。  事実の詳細が確定していないので現時点では確定的な意見を述べることはできませんが、副社長久保誠氏が「この対応は監査人として明らかに失格。ビットを行うので、EYの監査体制を一新してベストで臨んでほしいと申し入れた。」というメールがあるということであり、米監査法人のアーンスト・アンド・ヤング(EY)の対応に不満をもった東芝側がEYと提携している新日本有限責任監査法人に圧力をかけ、「屁理屈」とも言える会計処理を飲ませたということであれば、「監査責任」が大きな問題になることは確実でしょう。    東芝は、減損判定の際の手法を変えること、収益の日米合算化という2つの「奇策」を打ったとされ、これを新日本監査法人は適正意見を付けています。会計方針は合理的な理由があれば変更できますが、それは会計事実に照らしてみてという限定がつきます。 場合によっては、新日本監査法人の解散、東芝の上場廃止もあり得ると思います。アメリカでも損失を被った株主が集団訴訟を提起し始めているということもあり、米国証券取引委員会が動き出す可能性もあります。  今後も注視していきたいと思います。

若手弁護士の研修旅行の講師を務めました。

テーマは「中小企業政策における弁護士の役割」です。 私は,新進会という第一東京弁護士会の若手弁護士の任意団体のリーダーをやっていたことがあります。その縁があって研修旅行の講師を引き受けることになりました。 中小企業政策は,弁護士にとって微妙なテーマです。弁護士が大幅に数が増えたこともあって弁護士会によっては,若手の弁護士に中小企業の顧問を斡旋して恩を売り,選挙ではそこを推進した自分に投票してほしいみたいなことをやっていると外側からは見えざるをえない方がいらっしゃるので,端から見ていてなんだかなあという感じです。 弁護士会のやっていることをさておき,中小企業政策に専門的に従事している弁護士としていえることは,経営のことがわからない弁護士とは訴訟が起きるまでは何も話すことがないので,経営に必要な基礎的な知識があることが前提で,プラス法的な知識ということなのだと思っています。 中小企業政策については,基本書といえるような本がなく,あっても「中小企業論」という理論的な少し古めの本や、「中小企業法」という中小企業が関係する様々な法律を並べて解説したものになってしまいます。 中小企業政策って,産業政策や,社会政策や、福祉政策とどこがどう違うのだろう?,中小企業ってそもそもどんな視点で定まるのだろう?,中小企業政策の指導理念って何だろう?といった部分について,その歴史から説き起こして理論的な話をした上で,そこから生じる問題点を挙げ,その問題点に対処するために必要な弁護士の能力と役割に関する自覚について話をしました。 パワーポイントで40頁に及ぶレジュメを作成し,2時間ちょこっと話をしました。ちょっと時間が推していたので,冗長に及ぶ部分は省略し,話すべきことの4分の3位しか話せなかったので,ちょっとわかりにくい部分もあったかもしれません。その点を考慮して薄めのすぐ読める本を参考文献と推薦文献で挙げて復習できるようにしておきました。 現場での話の面白さを優先させて,パワポは,アニメーションを活用しました。パワポがほしい人は後にPDFデータを差し上げることにしました。 私が主催している勉強会 の10回くらいの講演内容を合体させて重複部分を削り,内容を理論的に整理して体系化したもので,かなり充実した内容になり,二次会や帰りの電車でも熱心にいろいろ質問を受け

社労士の勉強会(民法・民事訴訟法の基礎と判例研究)の講師を務めました。

 社労士の勉強会の講師を務めました。  テーマは、「民法・民事訴訟法の基礎と判例研究」です。  前回、 「債権法改正の概要」というテーマで講演をした のですが、一部の方から、民法と民事訴訟法はあまり勉強していないのでわからないことが多いとの意見がでました。  そこで、以前、若手の弁護士に講演したレジュメがあったので、これを社会保険労務士の先生方向けに研究対象の判例を労働法に変えて講演することにしました。  研究対象の判例には、茨城石炭商事事件(最一昭51・7・8民集30.7.689)と、 テックジャパン事件(最一平24・3・8判時2160・5) を選び、訴訟における審理の進め方、労働法の学説の発展の歴史の概要、判例の射程と拘束力を説明した上で、上記事件における実務家と、学説の対立点と、今後の判例がどのような方向で発展するのかについて議論しました。  参考文献には、水町勇一郎『労働法入門』(岩波新書新赤版1329)、中野次男編『判例とその読み方』(有斐閣)、池田真朗編著『判例学習のAtoZ』(有斐閣)を挙げました。  講演後だけでなく、懇親会でも多くの質問を受けて、「非常に勉強になりました」とお礼を言われ好評でした。  個人的には、最後のオチがウケて大爆笑で終わった点がよかったです。今後も継続して参加する予定です。  

中小企業診断士の勉強会(地理的表示法)に参加しました。

   今回のテーマは「 地理的表示法(GI)」です。    地理的表示法 とは、正式名称は「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」といい、平成26年6月に制定された法律です。    その目的は、農林水産物又は食品のうち地域で育まれた伝統と特性を有し、かつ、品質等の特性が産地と結び付き、その結び付きを特定できるような名称を地理的表示を呼び、その地理的表示を知的財産として保護し、もって、生産業者の利益の増進と需要者の信頼の保護を図ることにあります。   現時点で登録されている産品はありません が、具体的には、鹿児島県の黒酢のようなものを想定しているようです。黒酢は、創業200年というようなお店もあるようで伝統とその地域の特性を有していますし、その気候とカメで発酵させる特性がその地域と結びついていて、鹿児島の黒酢として特定できます。近時その健康効果が着目され、サプリになっているようですが、粗悪な類似品も出始めているようです。詳細は下の「徳光・木佐の知りたいニッポン!」がわかりやすく解説しています。  ヨーロッパでは、例えばシャンパンは、シャンパーニュ地方でとれたスパークリング・ワインのみがシャンパンと表示できるというような制度があります。イタリアでは、プロシュート・ディ・パルマという生ハムがあるようです。我が国ではこのような制度が不十分で、つとに批判されていました。今回、地理的表示を害するものには、刑罰を科すことにより保護することになった点が画期的であるといわれています。   地方創生のためには、地域ブランド戦略を立てることが必須となりますが、そのような点からも多くの人が利用することが望まれています。  ただ、 申請手続きはけっこう手間がかかる ようですし、その費用や、その後の管理を含めると、その効果が費用に見合うものであるかどうかがネックになるような気がします。  弁護士としての法律業務ですと、このような種類の法律の勉強をする機会はあまりないので、大変参考になりました。  今後も継続して参加したいと思います。 参考文献 ・ 農林水産省のウェブサイト ・ 徳光・木佐の知りたいニッポン!

社労士の勉強会の講師(債権法改正)を務めました。

 社労士の勉強会の講師を務めました。テーマは、「債権法改正の概要」です。  債権法の「改正の理由・改正の経緯」から始まり、実務上の影響の大きい「消滅時効」、「法定利率」、「保証」、「定型約款」の四つに絞って講演しました。  今回の改正は、「確立した判例」を整理して条文に組み込み、「学説の到達点」を示すものなので、きちんと学者の本を読んで勉強してきた人からすると、自分の知っていることが条文になるだけなので、そんなに困ることはありません。  六法で条文を探すのは慣れるまでは大変でしょうが、法律家である以上仕方がないとあきらめるしかありません。  急いで債権法を改正しなければならない立法事実があるかというとかなり怪しいのですが、国際競争という観点からすると改正したほうがいいのでしょう。  講演後はいつものように懇親会に参加しました。その中で、「債権法改正は文化戦争なんですね」という感想がでてまさにそのとおりだと思いました。

中小企業専門家育成講座(企業価値評価のあらまし)を開催しました。

  前回 に引き続き、中小企業専門家育成講座の司会を務めました。今回も160名を超える先生方の申し込みがあり、講演は大盛況でした。しかも、開演5分前に非常に多くの先生がいらっしゃるので受付は大混雑です。皆さん時間管理がお上手です。  今回のテーマは「企業価値評価のあらまし」で、 公認会計士・税理士の坪谷敏郎先生 に講演をしていただきました。 ご著書の一覧 はこちらです。  M&Aは事業ないし株の評価、金額を決めること必要不可欠です。概説書もいろいろでていますが、どれも総花的でいまいちわかりにくいというのが正直な感想でした。  坪谷先生の講演は、実務的に重要な点に絞り、具体例を交えて、理論的な問題点と実務的な問題点を解説いただき、とてもわかりやすいものでした。  企業価値評価の方法は、大きく分けると、時価純資産法、類似業種比準法、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)があり、そのうちのいずれか一つではなく、併用して定めるのが妥当であるというような抽象的な理論的であれば、弁護士であれば誰でも知っていると思われますが、実際にバランスシートや事業計画書から数字を出して作成していく具体的な過程について研究したことがある人はそんなにはいないと思われます。その意味で、今回の研修は経験の浅い先生方には得難い機会になるとともに、ちょっと難しすぎたのではないかが心配になりました。この点はアンケートの内容を検討してみたいと思います。  今回は質疑応答の時間がとれたのですが、最近気になっていることがあります。それは質問する人が非常に少なくなったということです。弁護士は個性的な人が多いので、いろいろな角度からたくさんの質問がでるのが通例なのですが、最近はそうでもありません。公開の質疑応答が終わった後に、講師の先生に名刺を渡して質問をしている人は結構いるので、決してやる気がないのではないのですが、ちょっとシャイな先生が増えているのかなと感じています。  講演の後は、懇親会に参加し、ここでも実務的な具体例を交えての本音の意見交換ができました。次回でM&Aをテーマにした研修は終わりになります。

中小企業専門家育成講座(第三者承継についての法的問題点)を開催しました。

 いつもは講座に「参加しました」との表現ですが、今回は「開催しました」との表現になっています。今回、研修を主催している中小企業部会の部会長が体調不良で欠席のため、副部会長の私が急遽司会を担当することになったからです。  今回も約120名の参加者があり、会場もほぼ満席でした。人前で話すのも100人を超えるとかなり緊張します。   講師は、第一東京弁護士会中小企業部会会員の先生方3名で、具体的な設例を挙げて順に検討していくという方式でした。  講演では、「株券の時効取得、スクイーズアウト、事業譲渡と債務整理」等の論点を交え順に話が進みましたが、具体的な制度の説明を十分にする時間はないので、それらは弁護士であれば当然わかっていることが前提になっていたこと、幅広い分野の問題が複雑に絡み合っていることなどかなり先端的で高度な内容になっているのではないかと感じました。     講義後回収したアンケートの評判は上々で講座終了後も10分近く時間をかけて詳細な意見を記載してくれた先生方がいらっしゃいました。    講座終了後は、いつものように懇親会に参加し、意見交換をしました。次回以降も継続して参加する予定です。

社労士の勉強会(病院のお仕事)に参加しました。

 月1回社会保険労務士の先生方の勉強会に参加しています。  今回のテーマは、「病院の経営について」です。普段聞く機会のないお話なのので、非常に楽しみにしていました。  厚生労働省のHPにもあるとおり、 医業の経営は相当厳しい ものがあるようです。とにかく医療費を削減するのが国の方針になっており、今までの経営を続けていては成り立たないのは、明白ですが、 医療法 を始めとする、様々な法規制があり、「効率的な経営」を簡単に目指すというわけにいかないとのことでした。  人件費の経費にしめる割合は、非常に高く、シフトを組むときの苦労や、残業代の計算等が非常に複雑で、時間がかかるとのことでした。  また、 救急車の一部有料化 、健康保険証をもたない青年層の増大等の社会問題を実感させられるケースも多く、情熱をもっていないと続かないという実態もあるようです。  公立病院は、大変なところが多いが、私立病院であれば、基本は儲かっているのかと誤解がありましたが、そのような偏見を払拭できたいい機会でした。  今後も引き続き参加を続けようと思いました。

中小企業専門家育成講座(第三者承継の基礎)に参加しました。

  講師は、第一東京弁護士会中小企業部会会員の池内稚利先生です。経歴は こんな感じ で2011年度に第一東京弁護士会の副会長もしています。  テーマが今はやりの「第三者承継」ということで、200名以上の申込があり、126名入る会場が満席で立ち見が出るほどでした。運営者側の人間として、会場の設営上やむを得ず70人近くの方にお断りのご連絡をしなければならず、大変申し訳ない気持ちで一杯でしたが、先着順なのでご容赦ください。   講演では、「今なぜ第三者承継か、第三者承継の方法、フロー、注意点、事前準備、マッチング、意向書、デューデリジェンス、契約書作成」と順に話が進み、M&Aの概要、実務上の注意点がわかりやすく説明されました。   豊かな実務経験に基づく実践的な内容で、私自身大変勉強になりましたが、講義後回収したアンケートの評判も上々でした。  今回の講演は、ビデオ撮影をしておらず、インターネットで会員が見ることができません。  ビデオ撮影をすると、どうしても中身が薄くなる傾向があるので、やむを得ない面もあるのですが、この点は今後の検討課題です。    講演後は、いつものように懇親会に参加し、意見交換をしました。次回以降も継続して参加する予定です。

最高裁が被告人の供述を制限した地裁の対応を批判

  最高裁が地裁の対応を批判し、裁判長が補足意見でこういう対応をすべきであったと詳細を述べるというという判決がでたとの報道 に接しました。珍しいと思います。  報道では、法律的な知識がないため、 ちょっとおかしな表現をしているもの が多く、わかりにくいものとなっておりますが、事件の経緯は以下のようなものであったようです。    判決の全文は最高裁判所のHPで公開されています。詳しくは こちら を。  ①公判整理手続きで弁護側はアリバイの主張をしたものの、具体的な主張をせず、裁判所も釈明を求めなかった。  ②被告人が公判で具体的なアリバイの供述を始めたところ、検察官から(公判整理手続きで主張されておらず、事件と)「関連性なし」との異議が出され、裁判所がこれを認め、被告人の供述を制限した。  ③被告人は、最終弁論で、具体的なアリバイを陳述し、裁判所もこれは制限しなかった。  最高裁は、以下のように判断しました。  ①で弁護側はアリバイの主張はしているから、②の検察官の関連性なしという異議がそもそも間違っている。  したがって、検察官の異議を認めた裁判所の判断も間違っていて法令に違反してる。  しかしながら、③で、具体的な陳述をして、裁判所もこれを制限しなかったから、有罪という結論に変わりはないから、被告人の上告は棄却する。  検察官出身の裁判長の小貫芳信裁判官の補足意見を意をくんでおおざっぱにいうと以下のようなものです。  ①そもそも裁判所は公判整理手続きの段階で、弁護側にアリバイの主張について、具体的にせよと釈明を求め、それができないというのであれば、その理由を明らかにしておくべきだった。  ②本件では、関連性がないという検察官の異議は無理がある。ちょっと肩を持つなら、アリバイを立証する人物の証人尋問等公判整理手続きで予定されていない立証手続きが必要になることから、検察官が新たな主張と考えたのかもしれないが、主張と立証は別のものだから、被告人の供述を聞いた上で、真偽確認のための反対尋問をすべきであった。  ③弁護人も誤解が生じないように事前に連絡をすればよかった。  ④裁判所もたとえ新たな主張であったとしても、供述を制限するのではなく、新たな主張をするに至った理由も含め、その信用性を吟味して判断すればよかった。  直接証拠を

社労士の勉強会(マイナンバー制度について)に参加しました。

 社労士の勉強会に参加してきました。  今回のテーマは「マイナンバー制度」です。  マイナンバーは、社会保障・納税番号制度とも言われ、平成28年1月以降、社会保障、税、災害対策の分野で行政機関などに提出する書類にマイナンバーを記載することが必要になっており、平成27年10月から郵便にて通知がなされることになっています。  内閣府の ホームページ や、 政府広報 で内容は確認でき、 ツイッター もあるのですが、制度の周知度は残念ながらまだまだ低いと言わざるを得ず、従業員やアルバイトを雇用している中小企業、個人事業者の事務作業の負担も大きく、今から十分な準備が必要です。     マイナンバーが漏れればなりすましに使われる可能性があり、実際に類似の制度が採用されている外国では、その被害が報告されています 。  マイナンバーが漏れるのを防ぐため、 個人情報保護法よりも罰則の種類が多く、法定刑も重くなっており、4年以下の懲役に問われる可能性もあります。  中小企業でも対応する必要がありますので、これ機会に、税や社会保障に関するコンプライアンスを見直す必要があるだけでなく、パソコンには、最新のウィルスソフトを導入した上で、パスワードを設定し、マイナンバーにアクセスできる事務取扱者や責任者を決めるなど、会社の人事、システム体制を構築する必要があります。  平成29年1月から、パソコンから自分の納税状況や各種行政手続きができるという国民側のメリットもあるようですが、詳細は未定ですので、現在のところ、中小企業の立場からすると負担感しかないというのが実感ですが、もはや待ったなしの状況ですので、速やかな対応をご一考ください。    

中小企業専門家育成講座「経営者保証に関するガイドラインについて」を受講し ました。

   第一東京弁護士会中小企業部会主催の「中小企業専門家育成講座」を受講しました。   今回のテーマは 「経営者保証に関するガイドライン」 です。このガイドラインは、平成26年2月1日から実施されており、会社の債務を保証した経営者の保証契約による責任を限定し、早期の事業再生を促すことによって、債権者にとって経済的な合理性が期待できる状況が生じた場合に華美でない自宅や一定の範囲内の現金を残すことを認める制度です。    「経営者保証に関するガイドライン」は、あくまでガイドラインで法律のような強制力を持つものではありません。あくまで債権者にとって経済的な合理性が認められることが条件になっていますので、これを利用すれば必ず自宅を残せるというものではありませんが、会社が倒産した場合には必ずといってよいほど経営者も同時に破産をしなければならない今までの状況と比べると、「やり直しのできる社会」を実現するものといえ、法律実務家のみならず、多くの中小企業の経営者の方々が非常に注目している制度です。    今回の講師はLM法律事務所の森直樹先生です。 経歴はこんな感じ ですが、会社更生など大型の法的再生事件だけでなく、企業再生支援機構のディレクターなど私的な再生事件を多く手掛けている方です。    講演では、中小企業再生支援協議会によるガイドラインに基づく保証債務の整理手順、地域経済活性化支援機構、実務上の体験談における問題点など、先駆けて実務を経験した人でなければ話せないお話が聞けて大変勉強になりました。    金融庁のHPで 「ガイドライン活用のため参考事例集」 が公表されていますので、これを機会に集中して勉強したいと思います。    受講後は、またもや主催者側の人間であることを活用して講師の先生との懇親会に参加しました。    あくまでもここだけのお話でというようなレアな情報もゲットしました。    今後も継続して参加していこうと思っています。

責任能力のない未成年者の監督責任に関する最高裁判例

  「小6蹴ったボールよけ死亡、両親の監督責任なし」 というニュースに接しました。  判決全文は こちら で公表されています。結論としては妥当な判決だと思いますが、11年かけて最高裁まで争わないとこの判決がでなかったということに疑問が残ります。  遺族側の弁護士は、民法709条又は714条1項に基づく損害賠償を子供の両親に対してのみ請求していました。   民法714条1項 は次のように規定しています。 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、 その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、 その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 ただし、     監督義務者がその義務を怠らなかったとき、は、この限りでない。 1.の責任無能力者というのは未成年者のことで、 民法712条 は次のように規定しています。 未成年者は、 自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、 その行為について賠償の責任を負わない。 2.は「責任弁識能力」と呼ばれています。法的な責任を負うかもしれないと理解できる能力のことですが、判決では、その下限は11歳から14歳まで広く分布して分かれており、今回も責任能力はあると判断される可能性もあったのですが、判決では、責任弁識能力はないと判断されています。  常識的に考えると、11歳になれば、自分が間違ったことして人に怪我をさせれば単に謝って済むことではなく、法的な責任を負わなければならないのではないかということくらいわかる知能はあるではないか、とも思いますが、後に説明する昭和49年の最高裁判決がでるまでは、責任能力があるとされると民法714条の不法行為が成立せず、被害者が救済できなくなってしまうので、ちょっと無理して高い年齢の子供でも、そんな知能はない、と説明してきたのです。学説では、 自分が間違ったことして人に怪我をさせれば単に謝って済むことではなく、法的な責任を負わなければならないのではないかということくらいわかる知能は 6、7歳ならあるのじゃないか、などと言われています。  実は、ここが訴訟のテクニックに左右されるところで、今回のように、あえて学校は訴えないとか,民法709条だけで請求しちゃうとか、民法719条1項だけで請求しちゃ

中小企業診断士の勉強会の講師を務めました。

 私は,中小企業診断士の勉強会に参加しています。今までは,参加者の一人として発言するだけでしたが,今回はこの勉強会では初めての講師になります。  テーマは,「平成26年会社法改正について」です。  本改正は,会社法制定以来の大きな改正で,理論的にも実務的にも重要なものといわれています。  平成27年5月1日の施行を間近に控えての講演だったので,参加者はいつもよりちょっと多めだったのがうれしく思いました。  本改正では,監査役等委員会設置会社の創設,社外取締役を置くことが相当でない会社の説明義務、社外取締役等の要件の厳格化,多重代表訴訟の導入,組織再編の差止請求の拡充,詐害的会社分割が実現した点は特筆すべき点です。  これらの点につき,順次説明していきましたが,中小企業診断士向けの講演ということもあって,最後の「詐害的会社分割」に若干多く時間をとり,私の実務経験を踏まえた上の体験談を述べさせていただき,その後,参加者全員で意見交換を行いました。  いつもはその後の懇親会にも参加するのですが,本日は,体調があまりよろしくないため参加できず残念でした。  仕事が忙しいとなかなかまとまって勉強する時間がとれませんが,講師を務めるとなると手は抜けませんので,本テーマについて、数冊本を読んだ後,法制審議会のメンバーの経歴等雑談に必要な情報をネットで確認してから,挑みました。  今後も機会があれば,やらせていただいたいと思っています。

三鷹ストーカー事件控訴審破棄判決の解説

 三鷹ストーカー事件の一審判決が破棄されたとの報道に接し,とても驚いています。  懲役22年の判決が破棄され,1審に差し戻され,もう一度裁判員裁判をやり直すことになります。  ご遺族のお気持ちを察すると,いたたまれない気持ちになりますが,法律論としてはやむを得ないところです。  新聞記事のみで判決書を見たわけではないので,若干推論も混じりますが,わかりやすいのは 産経新聞の記事 でしょうか。この記事には,「大島隆明裁判長は「名誉毀損罪を実質的に処罰する判決で、1審の審理の進め方には違反がある」と指摘。」と書いてあります。  司法研修所といって,司法試験に受かった後に通う学校で勉強するときに使うテキストに「刑事判決書起案の手引き」という本があります。この本には,「判決書に「罪となるべき事実」を記載するにあたっては,他の犯罪をも認定したのではないかと疑われるおそれのある表現はできる限りさけなければならない」と記載されています。  一例をあげると,強盗において、住居侵入が起訴されていないのに,事実として住居に入って強盗をしたからといって,「○○方に押し入り」などと書いていけないと厳に戒められたのを思い出しました。  今回は,「池永被告が交際中に撮影した生徒のプライベートな画像を事件前後に流出させた「リベンジポルノ」に着目して,これを判決書に記載して,「名誉毀損罪を実質的に処罰する」ことは許されないとしたのです。ただし,この判決もリベンジポルノを「量刑を考慮する要素に取り入れること自体は否定」していないのですが,つまり,判決書に名誉棄損的な事実を記載したというような単なる判決の表現を問題にしたのではなく,「裁判開始前に裁判官と検察・弁護側の三者で行われる公判前整理手続きについて「(リベンジポルノについて)主張・立証を行うことの当否、範囲や程度が議論された形跡は見当たらない」こと,つまり,審理の内実が伴っていなかったのではないか,という点に着目して,裁判をやり直させることにしたのです。  控訴審の弁護人は,「同種事案に比べて、1審判決は重すぎる」と主張、検察側は控訴棄却を求めていた。」とあるので,おそらく弁護人が気付かなかった,主張していない論点を裁判所が職権で判断したのではないかと思われます。  以上は,司法試験合格後に直ぐ習うことなので,極

新年のご挨拶ー平成27年ー

明けましておめでとうございます。 昨年中は大変お世話になりました。 昨年末は税理士との忘年会や、社労士との忘年会や、中小企業診断士との忘年会等で忙しかったため、新年は久しぶりに家族と自宅で過ごし、初詣に行きました。 ちなみに、上の文章の「等」には、通常使われているより強い意味が込められておりまして、決して忘年会ばっかりで忙しかったわけではないという意味です。日常生活では、一つの言葉をめぐってその意味を確定しなければならない場面はそんなには多くないかと思いますが、裁判実務ではよく使われてる技術なのです。例えば、裁判である書証を提出して、その書証によって立証したいことを「○○が○○したこと」と書いてある場合と、「○○が○○したことなど」と書いてある場合とで、争点によっては、大きく意味が異なる場合があります。そこで、この「など」とは何か、と釈明を求めたり、その内容次第では撤回を求めたりすることがあります。 上の例は、自分の法律家としての知識・常識と社会的な常識のズレを表す一例です。古来から「牛羊の目をもって他人を評量するなかれ」と申しますが、狭い自分の知識や基準で他人を評価すると、自分でも気付かないうちに過ちをおかすことのないとはいえません。初心忘れるべからずの気持ちで本年度も仕事に励みたいと思います。 今年も宜しくお願いしたします。 平成二十七年 元旦